〜なるほど・ザ保健指導〜

1.このHP作成のきっかけ   2.なるほど・ザ保健指導〜説得する指導から納得する指導をめざして   3.楽しい指導とは  


1.このHP作成のきっかけ

黒板と先生の顔  最近,学校や地域の健康祭などで講話の依頼を受けたけれど,「どんな話しをすれば良いか 教えて欲しい。」と言う相談を歯科医師から受ける機会が増えました。一方,学校の養護教 諭や保健婦からも,「むし歯や歯周疾患の講話をお願いしたいのだけれど,お話しの上手な 先生を御存知ですか?」と聞かれます。***続けて養護教諭や保健婦は言います。「歯の 話しは最初から結論がわかっています。たとえば歯磨きの話し・甘いおやつはだめ!と言う 話・○○しなければならない!○○しなさい!等。私達が聞きたいのは,ありきたりの話し ではなく,もっと興味深いおもしろい話しなのです。」 もっともな意見です。たとえば映画を見たとしましょう。映画はハッピーエンドで終わりま す。しかしハッピーエンドだけを見ても何の感激もありません。 ハッピーエンド ***007などのスパイ映画が面白いのは,ハッピーエンドに至るまでの紆余曲折・ワク ワク・ドキドキがあるからハッピーエンドが活きてくるのです。****ところが歯の話し は,最初からハッピーエンド(歯を磨きなさい!甘いものがダメ!)が見えています。子供 達が歯磨きという"体を動かす"行為の前には,まず"心を動かせる"対話が必要だと思うので す。子ども達が日常を振り返って「このままじゃ,まずいな」という気持ちになるように引 き込む工夫が重要です。その為にも論理的で興味深い構成が必要となってきます。そんなこ とを考えてこのHPを作りました。また保健指導や授業などで使えるような写真を,ダウン ロードできるようにしましたので,ご自由にご利用くださ い。





2.なるほど・ザ保健指導

〜説得する指導から納得する指導をめざして〜



クイズ1:むし歯の季節

     動物園のサルは次のどの季節に虫歯が増えるのでしょうか?また、その理由は何でしょう?


     A:春  B:夏 C:秋 D:冬

さあ!考えてみて下さい。



 どうですか? すぐにわかりましたか? 解答を考えている時の 自分の頭の中での感情の動きはどのようなものでしょう? きっと ワクワク・ドキドキ・ハラハラしながら、どんな解答なのかが楽しみでしょう。 そして解答をみつけだしたとき  "ヘエー なるほど! これはつかえる! 早速明日、子供達に言ってやろう!" と思いませんでしたか?


 さて次にこの点について大脳生理学の立場から考えてみることにしましょう。大脳は 三層構造になっています。そしてそれらは 相互に関連しあい、人間の心理や健康そし て性格にまで影響を及ぼすといわれています。その三層構造は次のようになっています 。最も内側には、呼吸、食欲など生命の維持に必要な脳幹部があり、これは別名、"生 きるための脳"あるいは"爬虫類脳"と呼ばれています。 その外側には旧皮質である大 脳辺縁系が被っており、ここは情緒や感情を支配する部分で"感情脳"や"下等哺乳類脳 "とも言われています。そして最も外側には新皮質があり、これは知識や統合能力の源 である前頭葉などの"高等哺乳類脳"です。これは"知識脳"とも呼ばれています。

脳の絵  これらの脳はそれぞれ独立して存在するのではなくて、相互に関係を保ちながら働いて います。たとえば心配事があると食欲がすすまなかったり、勉強が手に付かなかったり するのは、"感情脳"が"生命脳"や"知識脳"に影響をおよぼしているからです。 ところ で この"知識脳"でのみ覚えたものはすぐに忘れるといわれています。たとえば昔習っ た数学の公式はほとんどと覚えていません。しかしその先生は恐い先生だったといった ことは不思議によく覚えています。つまり感情を伴った記憶はいつまでも覚えているこ とが多いようです。また知識の中でも、冗談などを言いながら楽しく教わったものは、 よく残っています。つまり感情をともなった知識はいつまでも覚えているのです。
 このことから、むし歯予防の指導でも知識としてのみ教え説得するのではなく、感情を 交えて教えることが大切なのがわかります。また単にノウハウだけを教えるのではなく 、相手の心に訴えかけ考えさせたり、納得させることも大切です。そのことによって、 いつまでも心に残る指導になると思われます。今求められているのはそのような指導技 術が必要だろうと思います。



<楽しい指導とは>

 さてこういったことを授業にあてはめてみましょう。
そうすると授業には
 ・楽しい授業と・楽しくない授業(つまらない・きびしい・苦しい) 
という面と、
 ・ためになる授業

 ・ためにならない授業
という面があります。
これらを組み合わせると次のように4つのパターンにわけられます。

 どんな授業がいいでしょうか?  もちろん1.の楽しくて・ためになる授業です。 それでは2.番目はどれでしょうか? これはなかなか難しいですね。すくなくとも4ではありません。 自分だったらどんな授業をしてもらいたかったでしょうか? 2.の楽しくて・ためにならない授業 3.の楽しくなくて・ためになる授業両者ともそれなりの論理があります。 ただ自分自身を振り返ってみると、自分が得意だった科目は ためになる・ためにならないは あまり考えずに、それが楽しかったから勉強したように思います。 楽しいからそのことについてもっと追求してみたくなり、次々と新しい発想も生まれてくるわけです。 楽しくなければ 新しいことを考えようという気にはなかなかなれません。すなわち楽しさの中から意欲や、創造性が生まれてくるのでしょう。
 それではこの"授業"を"指導"におきかえてみよう! そうするとあなたの指導はどのような指導をしているでしょうか?

 このようにしてみてみると どうも先程の感情脳に入る指導は 楽しいか?楽しくないか?ですね。 そして知識脳に入る指導は ためになるか?ためにならないか?です。 このように考えてみると 知識脳に入る指導は 学校で習ったり、聞きかじりのことが多いようです。感情脳に入る指導は いつまでも心に残る指導です。心に響く指導をしようと思えば マニュアル的なことを覚えて how toのみを教える指導では おそらく無理でしょう。 一般に マニュアル的に習ったことは how toの指導を越えることはできません。たとえば 5+5=10です。これは誰が何回計算しても10になります。しかし これが 10=○+△ と考えてみましょう。こうすると 0+10、1+9、2+8、 3+7・・・・と10個の答えがでてくるのです。 指導する相手には年齢 職業、家庭環境など みんな違うのですから 10=○+△ という発想が大事になってくるのです。 よくわかっていただきたいのは どんな指導でもただ一つの正解というものは存在しないというこ とです。
 あたりまえのことですが"何故だろう?"ということを自分の頭で考え、それに対するさまざまな自分なりの解答を導き出すことが大切です。 また それを考えることで自分自身も楽しくなってきます。しかも 指導は 楽しくて・ためになる指導方法が大切ですし、それができて初めて 役に立ち 行動変容につながっていくのです。学生時代得意だった科目は,試験の点数の高低に関係なく,その科目に興味を持ち,勉強することが楽しかったから,もっと先を知りたいから勉強したように思います。 興味を持つということは,大きなエネルギーになることがわかります。子どもだからわからないであろう・・。ではなく,子どもだからこそ…わかるような歯の話が重要であろうと思います。




*注):どうしてもクイズの答えが知りたいと思われる方は, 拙書"なるほど ザ保健指導"(クインテッセンス出版)を 立ち読みしてください。


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