歯のふしぎ博物館


歯のふしぎ博物館 

館長 岡崎好秀

(岡山大学病院 小児歯科)





▲阪神淡路大震災の時
避難所を廻った経験を持つ。

東日本大震災以来,日本中が暗いニュースで満ち溢れている
こんな時ほど,明るい話題が必要となる。

さて私は,阪神淡路大震災の時に大学からの派遣で,
避難所を廻った経験を持つ。
たいして役には立てなかったが,そこで垣間見たことを
紹介しておく義務もあるように思う。
そこで避難所であった“ちょっといい話”を紹介する。



▲寒い校庭で,たった一人
ギタ一片手に歌っている若者がいた。

 第1話

ある避難所へ着いた時,すでに暗くなり始めていた。
木枯らしの吹きすさぶ校庭で,たった一人
ギタ一を片手に歌っている若者がいた。

よく聞くと,昔よく歌った曲だった。
こんなボランティアの方法があったことに驚かされた。

その理由。
さて貴方の“懐かしい歌”や“青春の歌”は,どんな曲があるだろうか?
私はフォークソング世代なので
“戦争を知らない子供たち”や“翼をください”などを思い出す。



▲あのボランティアは,
そんな思いで歌っていたのだ。

 ある日突然,自宅や家族,自分がこれまで築き上げてきたものが
一瞬にして奪われたら,どんな気持になるだろう。
“どうしてこんな目に逢わなければならないのだ・・・。
“悪いことはしていないのに・・・。これは悪い夢に違いない・・。”
きっと,そんな思いが頭を駆け巡るだろう。

でもそれを受容し,新たな気持ちに切り換える。
その勇気づけ・励ましになるのが,自分が好きだった歌,
みんなと一緒に歌った青春の歌のように思う。
昔を思い出して,“もう一度 頑張ろう!”と思い前向きに生きて欲しい。
きっとあのボランティアは,そんな思いで歌っていたのだと思う。






▲診療中に校内放送が入った。
子どもの声だった。

 第2話.

避難所では,ダンボールの囲いがそれぞれの家庭の境界だった。
真冬なので暗くなるのも早い。
運動場はあまりに寒くテレビもないので,
子ども達が遊ぶ場所もなかった。

ある日,診療をしていると校内放送が入った。
子どもの声だった。

「これから○年生△組の教室で紙芝居を始めます。
みなさん来てください!」
何をするだろうと思い教室に行った。
すると,思いもかけない光景に出会った。



▲大人に言われしていたのではない。
自分達ができる仕事を探しだして,
紙芝居をしていたのだ

 なんと! 小学生が,幼稚園児達を集めて紙芝居をしていたのだ。
思わず胸が熱くなった。
子ども達は,大人に言われ紙芝居をしていたのではない。
自分達ができる仕事を,自分達で考え探しだして,
紙芝居をしていたのである。

素晴らしいことではないか。
最近の子ども達。
“わがままで自分勝手”,
“我慢が出来ない”など良いようには言われない。


でも本当は,そんなことはないのだ・・。
日本の将来も,まんざら捨てたものではないな・・と思った。