歯のふしぎ博物館


歯のふしぎ博物館 

館長 岡崎好秀

(岡山大学病院 小児歯科)





▲某番組 名物ディレクターのK氏

 6月に入りいささか蒸し暑くなってきた。
ビールがおいしい季節である。
さて先日,ある番組の名物ディレクターとお会いした。
この番組,約16年にわたり高視聴率を稼いでいる。
一回の放映のために,なんと3ヶ月の取材期間を設けているそうだ。
どのようにして,視聴者を飽きさせない番組作りをしているか興味ある。
面白くなければ視聴率が低下する。
・・かと言って,特定の食品をセンセーショナルに扱うと,売り切れ騒ぎになりかねない。
過剰な演出は,誤解を招き信用を損なう。

▲某県のカマボコ産地では,
11.4ミリに切るという

 そこでこの番組。
ふつうの食物をいかにおいしく食べるかを追求している。
例えば“カマボコ”の特集では,視聴率はかせげないだろう。
ここがディレクターの腕の見せ所・・・番組構成を考える。

さて某県のカマボコ産地での話。
都会人が切った,カマボコを一目見て
「これがでたら箸でどける!」と言い切る人がいる。
また地元の主婦も「こんなの出したら叱られる!」と言う。
どうやらこの差は,厚みにあるらしい。
横浜で100人に,カマボコを切ってもらったところ平均は9.2ミリ。
ところが産地で切ってもらうと11.4ミリ。
産地では2ミリ厚く切っている。
さて,どうしてだろうか?




▲スタジオで実験をしたら
11ミリのカマボコが圧勝した
どうやらいちばん歯ごたえが
良いようだ

 そこで大実験。
カマボコを7ミリから15ミリの厚さに切り人気投票をした。
その結果,11ミリが圧勝!
カマボコのプリプリ感が最高となるのが,この厚さなのだ。
そこで,さらなる実験。
カマボコをさまざまな厚さで切り,咀嚼筋の活動量を調べた。
5ミリから10ミリまで運動量が変わらなかったが,11ミリから急上昇。
そして12ミリ以上では,また低下。
どうやら11ミリのカマボコが,いちばん歯ごたえがあるようだ。
さらに脳波までを調べたら,アルファ波が良く出たとのこと。
11ミリのカマボコを食べることで,恍惚の世界に入ることができる。



 

▲こんな話しを聞くと
ビアガーデンで11ミリの
カマボコを食べたくなる

 さてこの話,誰かに言いたくなるまいか?
仕事の後,ビアガーデンに直行し
ジョッキを片手に11ミリのカマボコをつまみたくなるまいか?

でも歯ごたえは,自分の歯があるからこそ感じることができる。
そう考えれば,この話。つまるところ歯の話につながる。
歯にまつわる広報活動も,見習うべき点がたくさんあるようだ。

参考:カマボコはなぜ11ミリで切るとうまいのか?北折 一著(サンマーク出版)