おもしろ歯学


岡崎好秀

岡山大学・医学部・歯学部附属病院 小児歯科





▲クチバシには,さまざまな形がある


トリのクチバシには,“長いもの”や“短いもの”,
“太いもの”や“細いもの”。
それに先の“尖がったもの”や“丸いもの”などがある。
どうして,さまざまな形があるのだろう?

そこで,クチバシの形にヒミツについて考えてみよう。

さて一般的に,昆虫を食べるトリは,舌が長くて薄く硬い。
一方,植物食のトリは,丸くて厚い。
それにトリのクチバシと舌の長さは,正比例する。  




▲キツツキは木の中の昆虫を
食べるから舌が長い


キツツキ(クマゲラ・アカゲラ)は,木にクチバシで穴をあけて,
中にもぐっている昆虫を食べるから
その舌は長く5cmもある。
ところが,クチバシは,舌の約1/2の長さしかない。
長い舌をどこに隠しているのだろう?
頭の骨をグルッと回っている長い舌骨に収まり
必要に応じて長くすることができる。
しかも舌の先には,モリ状のギザギザがつき,
昆虫を引っかけて穴から引きずり出して食べる。
トリの食べ物に応じて舌が変化しているのだ。







しかし変化するのは,舌ばかりではない。
クチバシも種類によって大きく異なるのだ。
まずは,キツツキ。
硬く鋭くとがったクチバシで,木の幹に穴をあけ,
奥にひそんだ虫を,長い舌で捕まえる。
巣穴を作るときも利用する。
これは“ノミ”の役割をしている。

お次はペンギン。
ふちがナイフのように鋭いクチバシで,
サカナをすばやくはさみつけて捕らえ,頭から丸飲みする。
道具に例えると“ニッパ”の役割をしている。

今度はアヒル。
クチバシが広く食物をはさみやすいので,
多くのものを口の中に入れ食べる。
  ちょうど“火バサミ”のようだ。


▲クチバシにもさまざまな形がある


さらにインコ。
強力なするどいクチバシで,
硬い木の実も簡単に割り中身を食べる。
つまり“ペンチ”。
続けてサギ(ゴイ)。
細長く先端が尖がっているクチバシで,
泳いでいるサカナをすばやく捕らえる。
またつつくこともある。
これは“モリ”にあたる。



▲トリの食べ物により
クチバシの形が異なる。

さらにフラミンゴ。
くちばしを水中に漬け,水と食物を一緒に入れ,
クチバシのふちにあるフィルターの役目をする毛のような組織で,
水を外に出し食べ物だけを残して食べる。
まさに“ザル”である。

最後にペリカン。
下のクチバシには,サカナをたくさん捕らえるために,
伸び縮じみする薄い袋がある。
まるで“バケツ”のようだ。

久しぶりに動物園を訪れて,
さまざまな口を観察してはいかがだろうか?




▲動物園へ行って
さまざまな口を観察しよう!