歯のふしぎ博物館


歯のふしぎ博物館 

館長 岡崎好秀

(岡山大学病院 小児歯科)





▲典型的な和食とファーストフード
どちらを食べている人が健康だろう?

 食生活と健康との間には,大きな関係があることが知られている。
なかでも生活習慣病は,食生活の乱れによって起こるため,
子どもの頃からの予防が重要だ
そこで,“食育基本法”が制定された。
これは,子ども達が体に良い食べ物を選ぶ力を身につけ,
生活習慣病を予防するというものである。
そのため全国各地では,食育にまつわる多くの催し物が行われている。
ところで現在の食育運動には,“ある視点”が欠けているような気がしてならない。
この点について述べてみる。

さて,ここに典型的な和食がある。
焼き魚に煮物,野菜にみそ汁,そしてご飯。
一方,右はファーストフードである
さて,どちらを食べている人がより健康だろう? 
誰もが和食と答えるだろう。



▲バナナうんちとビチビチうんち
どちらが健康だろう?

  それでは逆の“出す方”の話。

どちらの,ウンチをしている人の方がより健康だろうか?
1:バナナタイプ
2:ビチビチタイプ
これも誰もがバナナと答えるだろう。

さて,ここからが難しい。
本題に入る!






▲和食を食べビチビチタイプと
ファーストフードでバナナタイプでは
どうだろう?

 これを組み合わせると次のようになる。
1:典型的な和食を食べて,ビチビチタイプの人
2:ファーストフードを食べてバナナタイプの人
さて,どちらが健康だろう?
誰もが答えにつまることだろう。

どちらが正しいのか筆者にもわからない。
ただ,“とりあえず若い頃”ということであれば,後者のように思う。
何故なら“ウンチは,身体からの便り”という言葉がある。
その状態は,腸内細菌の菌叢を現わしている。
善玉菌が優勢であればバナナタイプになるだろうし,
悪玉菌が優勢になればにおいが強くなる。





 

▲”口に入る前の食育”と
”口に入った後の食育”が
あるのではないか

 ここで言いたいこと。
それは,現在の食育運動は,“健康に良いものさえ食べれば,バナナタイプになる”
という思想に支配されているのではないか。 本当にそうだろうか?
健康に良いものを食べていても,ビチビチタイプの人もいるに違いない。
これは,“口に入る前の食育”と言える。

さて食育には,もう一つある。
それは“口に入った後の食育”である。
これが“よく噛む”ということである。
現在の食育には,この発想が抜けているような気がしてならない。
いくら健康に良いとされる食物を食べても,
噛まなければ消化不良を起こすだけである。
食育には“二つの視点”が必要であることがわかる。

そもそも,“歯は噛むために生えてきた”のである。
むし歯や歯周病になるために生えてきたものでなければ,
磨くために生えてきたものでもない。
言い換えれば“食”の話は,すべて
“歯や口“の話に置き換えることができるように思う。
“口に入った後の食育”を進めるのは歯科医師の役割なのである。