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岡崎好秀
岡山大学歯学部附属病院 小児歯科
はるか2億3000万年前から6500万年前まで,
恐竜が地球上を謳歌していた時代があった。 それはヒトに比べ遙かに長い歴史を持っている。 恐竜の存在は,我々をいにしえの世界に誘ってくれる。 ところでさまざまな種類の恐竜達は,何を食べていたのであろうか? |
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我々を太古の世界に いざなってくれる | |
肉食と草食恐竜の最も簡単な見分け方,それは“歯”である。 肉食恐竜の鋭く尖った歯,それは闘争の武器であると同時に 肉を食いちぎり骨までかみ砕いていた。 一方草食恐竜は,目の粗いヤスリ状の歯によって 固い植物く茎や葉をすりつぶして食べていた。 |
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さて恐竜についての研究は比較的新しい。 最初に発見された恐竜の体の部位は,どこかご存知か? 1822年,イギリスにマンテルと呼ばれる医者がいた。 往診の途中で,道路工事のために積まれた土の中に 一つの黒光りする石を発見した。 それは見たこともない歯の化石であった。 いったいどんな動物のものだろう。 当時は,世界に冠たる大英帝国の時代,世界中の “知”が結集されていた。 しかし世界最高の科学力を持っていても, これは何の歯であるかわからなかった。 サカナでもない,動物のサイでもない |
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当初は,何の動物の歯か わからなかった。 |
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ある日,南米のイグアナの研究家,スタッチベリィーがこれを見て, 爬虫類のイグアナの歯そっくりであることを指摘した。 そこでこの歯の持ち主の恐竜を“イグアノドン”と名づけた。 イグアノドンとは,“イグアナの歯”(odont=歯)を意味している。 この歯がきっかけとなって,多くの恐竜が次々と発見された。 世界の恐竜の研究は,このたった1本の歯から始まったのである。 ところで歯が最初に発見されたのは,恐竜ばかりでない。 ジャワ原人,北京原人も歯の発見が契機となっている。 現在,知られている人類の最古の直系の祖先である “ラミダス猿人”(440万年前)も同様だ。 歯が発見された付近を捜すと骨の化石が見つかるのだ。 |
イグアナの歯そっくりだったので イグアノドンと名づけられた。 |
さてそれでは,どうして歯が最初に発見されやすいのだろう。 歯の表面を覆っているエナメル質は体中でもっとも硬い。 だから化石として残りやすいのだ。 でも化石として残るためには,条件がある。 当たり前のことではあるが,むし歯がないことだ。 さて小・中学校に通っていた頃を思い出していただきたい。 歯の検診で毎年のようにむし歯を指摘された同級生がいたと思う。 ところが成人してからは,どうだろうか? 以前の様に,短期間に多くの歯がむし歯になることはない。 |
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化石として残りやすいのだろう? |
どうしてだろう? 実は歯は,はえた直後にむし歯になりやすい。 はえたての歯は,目で見たら硬そうに見える。 しかし完全に硬くなってはえてくるわけではない。 たとえば流したてのコンクリートがあったとしよう。 目で見た限りでは,軟らかいか硬いかはわからない。 しかし足で踏むと,穴があいてしまう。 歯もこれと同じ軟らかいのだ。 歯が硬くなるのは3年かかる。 逆に考えれば,はえてから3年むし歯にしないと, 以後にむし歯で悩まされる確率は減ってくる。 むし歯予防は,歯のはえた直後が勝負なのだ。 |
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タケノコのように軟らかく むし歯になりやすい。 |